建築設計業界には、「設計監理」という業務がある。
平たくいうと、設計図書通りに現場が施工されているか、
チェックをする仕事である。
特に仕上げてしまえば見えなくなる隠蔽部の確認は大切で、
まあ仕上の出来栄えも大切なのだけど、
コンクリートの中の鉄筋の数とか、
アンカーボルトの長さだとか、
構造に関わる部分の確認は特に基本の基本だから、
そこの確認は設計監理としては大切な部分だと思う。
デザインという名のもとに設計で未消化だった部分に手を加えて、
なんとなく巨匠ぶって、それが監理だと思い違いをしている人もいたりするけど、
まあそんな甘い時代はとっくに過ぎ去っていて、
あくまで契約書としての図面と現場の照合がシビアに要求される時代だ。
かつて、ある地域で、下請け業者が鉄筋をわざと一本設計量より少なく配筋して、
竣工後に元請を恐喝するという事件があった。
折しも自分が設計監理で現場常駐していたときで、緊張が走ったことを思い出す。
ある作業班の施工した鉄筋が、元請けのチェックをすりぬけ、いつも一本足りなかった。
もちろんやり直しでこと無きを得たけど。
その後この業界では一概に施工者だけの問題だけでなく、
設計監理の落ち度が疑われても仕方のない事件がいろいろあって、
非常に業界に逆風を吹かせている。
さらに追い討ちをかけているのが、官邸から発せられた
国の随意契約の原則廃止の流れだ。
元々天下り企業の排除が趣旨だったのに、
連続しているはずの設計と監理のプロジェクトを分断して
別の会社に委託する流れがいつの間にか出来つつある。
ちょっと乱暴な言い方をすれば、
一枚の絵を複数の画家に、時間ギメで順番に描いてもらうようなものだ。
前の画家のデッサンが気に入らなければ、後戻りもあるだろう。
そもそもそんなことをして、より良い作品が完成するのだろうか。
いやいや、設計に対して創造性などという言葉は、
期待もされていないのだ。きっと。
ということで、今までやっていた仕事の監理業務は無しになりそうな予感。
・・・というか、ほぼ無し確定。
中途半端な達成感と共に、1年半続いたプロジェクトが、
静かに幕を閉じようとしている。
さ、次いこ次!
posted by drag_on at 21:44| 東京 🌁|
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