2006年04月23日

ムーンウォーカー

image/drag-on-2006-04-23T16:59:40-1.JPGimage/drag-on-2006-04-23T16:59:40-2.JPG
久しぶりのオフ。
代々木のアースガーデンに「あふろん」な?お誘いを受けていたのだけど、
娘たちのたっての希望でいま多摩六都科学館に。
娘たちはムーンウォーカーがお気に入り。
久しぶりのまったりとした休日。
代々木のUAも魅かれるけど、
締めは安東ウメ子な国分寺の「がらーじ」でラーメンでしょうか。
そんな気分す。

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2006年04月16日

福岡、徒然。(当日編)

結婚式当日はかなり目覚めのよい朝だった。
相変わらず天気ははっきりしなかったが、昨日までとは打って変わって清々しい気分。
というのも、久しぶりの友人の結婚式、久しぶりのスピーチということもあったのだけど、
過去のログでも触れたように、某SNS繋がりのKさんに突然の結婚式の花束をお願いしていたことが大きかった。
無茶なお願いで、ご本人を当惑させてしまったのではないか、
とか、いろいろな思いが当日お会いする直前まで交錯したのだけれど、
実際お会いして本当に良かったと思うし、
何より想像以上にすばらしい花束を用意して頂いたことに、とても感激だった。

自分は人付き合いについては、どちらかというと性善説の立場に立っていると思う。
どうやらその傾向は昔からのようで、20代の頃に通っていたバーのマスターから、
「このままでは40過ぎたら絶対に若いネーちゃんにダマされるよ」
と半ばあきれ顔で諭されていたのだけど、最近はその意味も少しだけ理解出来る。
もちろんそのような状況に陥ることもないのだけど(笑)、
無条件に人を信じることが、必ずしもよい結果を生まないことは、
ここ数年のいろいろな出来事が教えてくれた。

しかしそれでも、前向きにいろいろな方にお会いすることが、
一度しかない人生のなかで、貴重な時間をもたらしてくれると信じている。

そんな中でぼんやりと分かって来たことといえば、
人付き合いの肝は、それまでのお互いの相手の経験の積み重ねに対して、尊敬を持って接することが出来るか、ということだ。
でもその理想論とは反対に、その部分を否定してしまったり、知らずの間に他人を傷つけてしまう人は少なくない。
そう、自身の経験の中でもそういったことは頻繁に起っていて、
時に自分が他人を傷つけてしまうことも正直のところ、ある。

ここ半年、いや、もっと長い期間、自分が低いテンションに陥っている根源はここにある。
だからといって、人を傷つけ、傷つけられることを避けながら、
中途半端な緩い日々を送るより、少しでも、より充実した日々を送るべきではないかと最近よく考える。

結婚式の新郎は同じ高校、大学、大学院。
同じ環境に9年。
そして違う設計事務所へ。

「自分の枠を決めてそのなかでベストを尽くすだけでなく、
もっといろいろチャレンジしてほしい」
と会社の上司からスピーチを受けていた彼はちょっと苦笑い。
彼の繊細さが理解されていないようで、
トリの自分の番がやってきたとき、朝一からスピーチ原稿をかいていたのだけど、急遽アドリブに切り換えた。

熱く、優しい彼の一面を伝えるために。

そして最後にKさんの花束。
久しぶりの結婚式は気持ち良く、盛大にお開きとなった。

その後博多駅南の知る人ぞ知る温泉で、同級生とまったり疲れを癒し、
空港で数年ぶりにエスタスカーサのT家族と再会。
すっかり大きくなった子供たちに時代の流れを感じ、
忙しなさは同じでも、福岡生活の精神的な豊かさを実感せずにはいられなかった。
いや、それを認めてしまっては、
自分の数年前の選択を否定することになるのだけと。

家族とは連休前に東京での再会を約束して、
福岡に別れを告げる。

国分寺に着いたのは夜も更けた頃。
一周年を迎えたソウルバーFFにお土産を持参し、帰宅。

短くも中身の濃い休日は、自分にとって貴重な時間となった。
(了)

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2006年04月11日

福岡、徒然。(前日編)

早いもので友人の結婚式から1週間が経った。
福岡で結婚式をする、と友人から突然の連絡があったのが今年の頭。
いきなり携帯に電話が来て、声のトーンが低かったので
これはどうしたものか、と思っていたら、
お約束の「実は・・・」攻撃。
余りに想定外のサプライズに駅のホームでのけ反ってしまったことを覚えている。

久しぶりの福岡だし、まあ結婚式の頃には仕事も落ち着いてるだろう、
と甘い考えで泊まりがけで考えていたものの、
これも想定外で仕事は今もロスタイムが続いていて、
仕事場のイスでのけ反ってしまう毎日だから、
これまたハードスケジュールな福岡紀行と相成るわけで。
たまにはゆっくりしたいと考えていたものの、
例によって例のごとくな2日間となった。

前日の夕方は汐留でアスプルンド展を舎弟1号と駆け足で巡ったあと、
会社の後輩から「羽田がかなり込んでいる」との情報を受けて早めにターミナルへ。

普段の疲れからか、不覚にも羽田を離陸する寸前から爆睡していたようで、
不快な揺れに目覚めた時は既に博多沖。あいにくの悪天候のなか、
お約束の旋回を続けながら、着陸のタイミングを待つ時間が飛行機に乗っていて一番嫌な瞬間である。

自分がかつて住んでいた福岡のマンションは、
ちょうど飛行機が海の中道を通過して福岡市内を一旦低空で掠めながら、
急なUターンを切って山側から着陸する際の進入路にあって、
天候の悪い日は風に機体を大きく翻弄されながら飛行機が次々着陸する様を窓から眺めては、
出来ることなら飛行機に乗りたくない、という気持ちが大きくなっていったことを思い出す。

そんなことを頭の中で巡らせていると、不意に窓に見慣れた福岡の街が現れ、程なくして滑走路に飛行機は安定感を保ちながら滑り込んだ。

夜の福岡は久しぶりの大粒の雨。東京より暖かくて、雨に濡れても心地よいくらいだったが、
ここで体調崩す訳にもいかないのでコンビニで傘を買い、ホテルに急ぐ。

かつてのチャリンコ通勤路付近にある今回のホテルは、些か旅情気分を喪失させ、どちらかといえば郷愁すら感じさせる。
目の前は昼飯でよく通っていた福岡では有名な中華料理屋だし、近くのコンビニではよく立ち読みをしていた。

ふとコンビニの雑誌コーナーに昔の自分がいるような気がして、
当時の自分に、メッセージを伝えることがあるとすれは何をいうだろうか、と思いを馳せる。
「ずっと福岡に止どまるべきだよ・・・」
きっと自分はそうアドバイスするだろう。
もっとも、かつての自分は他人の忠告を聞き入れるような大きな器ではなかったのだけど。

宿に荷物を置くと、一足先に福岡入りした大学時代の同級生が飲んだくれている店、「ルドゥー」へ合流。

彼は大学院から他の大学の有名な建築史研究室に籍を移していた。
この店はその研究室出身の彼の友達が開いている店だ。
だから知る人ぞ知る幻視の建築家、ルドゥーの名前が店の名前になっているのだ。
初対面の大分出身のマスターと、奥さんの創作したすばらしい料理と、カボスの酒で盛り上がる。
自然と彼らの大学院の研究室の話題が多かったのだが、
自分の知っている人の名前が出て来てちょっとしたサプライズ。
全く別ルートで知り合ったミクシィ友にもいるマ○さんは、そこの研究室の出身で、
その当時からブログの通りの武勇談が絶えなかったらしい・・・。
うーん、やはり世間は狭いのだ。

すっかり上機嫌になったところで自宅の彼女から電話。
遠く離れると不思議なもので、久しぶりに携帯の電池が切れるまでの長電話。
ツールを介して向き合う関係。
僕らはどうやら最初の振り出しに戻ったようだ。

その後警固のラーメン屋で、東京では味わうことの出来ない力強い豚骨味を堪能。
店内を見渡すと有名人の色紙がたくさんあって、
自分のカウンターの前にはちょうどリリーフランキー氏のサイン。
ふと切ない「東京タワー」の物語を思い出す。

・・・いやはや、明日はおめでたい結婚式だよ。

突然のスピーチも頼まれていたのだけど、その日は様々な疲れが一気に押し寄せ、
普段の生活から比べれば、ずっとずっと早くに深い眠りについた。
(つづく)




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2006年04月08日

入学式

気がつけば桜も綻び始めた今日この頃。
卒園の次は入学式ということで、せわしなく行事が過ぎていく。

一昨日の入学式はもちろん子供が主役。
でも、子供以上に担任の先生はどんな人だろうか、
とか、複雑な思いを抱くのはむしろ大人のほうで、
やはり最初の先生との出会いが子供に与える影響が大きいから、
最大の関心事であったりもする。
娘たちが入学したのは地元の公立の小学校。
自分も公立校だったけど、自分が小学生の時と随分違うなと感じることが多々あって、些か窮屈な雰囲気が少し気になった。
それは具体的に何かと聞かれてもうまく説明出来ないのだけど、
きっと子供の時には理解出来ない「大人の都合」が読み取れるようになったからだろう。
そういった意味では自分が子供の頃から学校もPTAも、なんら変わる事なく伝統が続いていて、
その仕組みにやっと気がついた、ということかもしれない。
いろいろな考えの大人がいて、それに多少なりとも影響されて子供は育つ。
そこには多様な価値観が共有されるべきなのだけど、
どうも入学式のイベントの中で、
既にモノカルチャー化した単一指向の空気を感じてしまったようだ。

もちろんその窮屈さというのは初めの杞憂に過ぎない、ということもあるだろうし、
何はともあれ、これからの小学校生活を
楽しく有意義に過ごしてほしいな、と思う今日この頃。

先ずは入学、おめでとう。

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2006年04月03日

初めての出会い

タイトルで引っ掛かってこられた人には申し訳ないですが、
初めにお断りしておくと、ちょっと内輪受けの話だったりします。
そしてちょっと徒然に書いていますので、文章が緩いかも知れません。


先週は2人のネット繋がりの方とお会いする機会がありました。

お一人の方とは平日の昼間、奇跡的に、とある駅で待ち合わせ、
移動中の電車の中で、ほんの一瞬ながらお話しする機会を得ました。
その時間、僅かに15分ほど。

その方は某所のSNSで「お友達」になって以来、
頻繁にネットでのやり取りをしていたのですが、
実際お会いすることなく時間が流れ、
2年の歳月が経とうとしていました。

歳が一廻り以上ですし、
彼と呼ぶのはおこがましいので仮にHさんとします。

Hさんはどのようにしたらネットの中で安心したコミュニティが出来るか、
ということを常に考えていました。
それは私を含め、あのSNSに参加した人の共通の願いであったはずでした。
主義主張や世代を超えた繋がりを求めるべく、集まった人達のなかでも、
Hさんからはその想いが強く感じられました。
しかしその想いはSNS管理者から誹謗中傷の書き込みを受けるという、
信じられない事件によって打ち砕かれてしまいます。

確かにSNSの運営のあり方に批判的な意見をSNSの中で綴ることは、
管理者にとって鼻持ちならないことかもしれません。
しかし主客の反転した殿様商売ではいずれ限界が訪れることは明白でした。
そして何より、安心したコミュニティの構築とは
真っ向から相反する運営のあり方について、
黙って見過ごすことが出来ない状況も確かにあり、
自分も、キツく毒を吐いた文章をアップしたこともありました。
最終的に不可思議な「決着」によりHさんは管理者から
SNSを「追放」されることになります。

そのような経緯もあって、いろいろな噂や憶測が流れ、
自分のところにも、
「Hさんは一体何者なのか?」とか、
「何故そんなにHさんに肩入れするの?」とか、
いろいろな問い合わせがあったりしたのですが、
自分自身も実はお会いしたことがないので
コメント出来ない状況が続いていました。

ただ、2年間の文字だけによるお付き合いのなかでも、
お互い共感出来るところ、出来ないところの分別がきちんと出来て、
きちんとお付き合いが出来る方だと信じていました。

そしてそれは今回お会いして確信に変わりました。
非常に物静かで懐の深い方。
そういった人を悪者に仕立てあげるような卑怯なシステムは、
ある意味社会の縮図そのものなのかもしれませんし、
余りに日本的SNSの真髄をついていたのかもしれません。


もう一人の方は、福岡にいらっしゃるKさんという方で、
やはり某所のSNSで知り合い、福岡繋がりということもあって
地域ネタの話題でやり取りがあったのですが、
福岡に時折出向く時は、住んでいた頃の会社の先輩や、
旧知の友人とあう時間がどうしても優先となり、
なかなかお会いする機会がないままでした。

そして一昨日。福岡で友人の結婚式があり、
とんぼ返りの強行軍ではありましたが、
その合間にお会いすることが出来ました。
綺麗な花束と共に。
しかしその時間、僅かに数分・・。

余りに短い間でしたが、その瞬間でKさんの人柄が
かつて読ませていただいた素晴らしい文章そのままの
方であることが理解できました。

SNSの付き合いというのは、必ずしも「安心感の提供」という大義名分の
システムによって担保されるわけではなく、
一般社会と同じく多種多様な考えの人が集まってくる訳だから、
極端に偏った人が少なからずいるのは間違いなくて、
その部分をどのように乗り越えて行くのかは、
やはり個人の努力しかないのかなとも思います。

つまらないことを言う人間は沢山いる。
都合のよいことばかりを言う人間も沢山いる。
表と裏でいっていることが違う人も沢山いる。

そういった中で、先週純粋に素晴らしいお2人に出会えたことに、
本当に感謝したいと思います。




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2006年03月27日

サヨナラ、夏の日々。#end

「人生、楽しまなきゃ。考えすぎは良くないわ。
 人間ってさ、一瞬先は何が起こるかわからないから。」

その言葉が頭の中をグルグル巡る。
ある意味で自分は余計なことを
考えすぎなような気もするし、
かといって、
御気楽なエピキュリストになるのも
気が引けている自分がいた。
ただ、毎日を充実させていくことの大切さ、
みたいなものは共感できる。

現実を直視できなくなるとき、
やはり誰もがどこかに救いを求めたり、
時には逃避をすることもあるだろう。
でも、それだけでは状況は変わらない。
がっつりその現実と対峙しながら、
そこに立ち向かわなければ、
一向に状況は変わらないのだから。・・

「あなただって、次の瞬間、自分の身に何が起こるか、
 分からないでしょ?」

と、彼女はまた、意味深な言葉を投げかけると、
また不思議な微笑を私に投げかけた。

自分はその微笑にどのように答えていいかわからず、
ただただ、頷くだけしかできなかった。


・・すっかり時間が過ぎていて、陽は傾き始めていた。
「帰りはどうする?」
ふと私は帰りの時間を気にしはじめた。
壁にはバスの時刻表があった。
あまりバスの本数も無いので、
そろそろ時間を気にしないといけない。

ふと、バスの時刻表のなかに、
意外にも「羽田空港行」という文字をみつけ驚く。
ここは千葉のど真ん中。どう考えても、そのルートが思い浮かばない。

そう、東京湾を横断するアクアラインの存在を思い出すまでは。

私はアクアラインを通ったことがなかったので、
このバスに非常に魅力を感じた。
また千葉市内を通過して、会社の近くを通って帰るよりは、
気分のいい海の中を突っ走ったほうが、気持ちがよいだろう。
そう思って、バスの時刻をみると丁度いい時間。
足早に彼女に別れを告げると、私はバス停へ急いだ。

バスはほどなく来た。
いわゆる空港バスだ。快適そのものである。
バスは木更津に向かうと、
いよいよアクアラインである。


と、そのとき、事件はおこった。
・・私のお腹が、急にゴロゴロと鳴り出したのである。
「そんな馬鹿な・・・」
突然の腹痛に、額からは脂汗が流れた。
時間をみると、まだ空港までは時間がある。

周期的に訪れる痛みの間隔が次第に短くなり、
その終末の時が近いことを知らせていた。
伸びやかな景色をみながら、バスの乗客は
非常にリラックスした表情をしている。
自分ひとりが、なぜ?という気持ちがさらに
腹痛に拍車をかける。
イチゴミルクか?
彼女の不思議な微笑が、また脳裏をよぎる。

私は意を決して席を立つ。
ユックリと、運転手に近づく私を、
乗客が不審と恐怖の目で追いかけるのが見えた。
いや、自分はバスジャックなどする奴じゃないよ・・

「す、すいません、と、トイレは・・」
「我慢できませんか?あと少しなんですけど。」
「だ、だめです...」

と、小声での会話が終わると、運転手さんはマイクで
乗客全員に、大声で語り始めた。

「え〜、お急ぎのところ、申し訳ありませんが〜。
 このバスはうみほたるに臨時停車します。
 おトイレ、我慢できないかたがいらっしゃいますので〜・・・」

恐怖に慄いた乗客の目が、一瞬、嘲笑の目に変わる
瞬間を、私は目撃した。

・・・サヨナラ、夏の日々。・・・

(了)
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2006年03月26日

サヨナラ、夏の日々。#2

「あんた・・いい耳してるね。」

不意打ちにあった私は思わず仰け反ってイスから落ちそうになった。

不覚だった。
私が時間の止まっているこの空間と、
その中でただ一人黙々と店番をする彼女を、
半ば好奇の目で見ていた私は、
逆に平日の昼下がりにスーツ姿でかき氷を食らう珍客を
サリゲナク観察する彼女の視線に気がつかなかったのだ。
普段の仕事の緊張から解放された私は、
どことなく懐かしさを感じさせる空間と相まって、
ほとんど素の状態をさらしていたに違いない。

私は改めて彼女の眼を見つめた。
既視感のある眼だった。
今まで、何千、いや何万という数の客と接したであろうその眼には、
相手の気持ちを瞬間に読みとる能力だけでなく、
多分自己の経験に裏打ちされた、深い慈悲の心も感じさせた。

私は体制を整えると、こう答えた。
「いや〜、そういわれ続けてずっと育ちましたけど、どうなんですかね?」

彼女は全てを了解した顔を一瞬見せた後で、ただ微笑んだ。

カキ氷を食べ終わる頃には、
旧式のテレビから流れる
遥か昔の退屈なドラマの再放送も終わり、
ニュースの時間となっていた。

突然キャスターが凶悪犯罪の発生を告げる。
犯人は若者だった。

「ばからしいよねぇ。」
彼女はそう呟きながら、後片付けを進める。
相手に同意を求めるでもなく、多分独り言の
呟きに近いものだったのかもしれないが、
自然と、私は「そうですね」と返答をしていた。

「つまらないことしてさぁ。最近、後先考えないで
 自分の都合ばかりを廻りに押し付ける人が多いよね。
 その究極の姿がこれよ。・・」

彼女は吐き捨てるように言った。
私はちょっと返答に躊躇したが、
また、「そうですね」と返答をした。
やる気のない返事に
彼女は少し苛立ったのかもしれない。

「あなたって、堅い職業なのね!」

「いえいえ、イツモは結構ぐずぐずですよ。
 今日は役所へ書類の提出があったから、
 こんな堅い格好してますけどね。」

と、慌てて打ち消す私。

「社会との関係性をあまりお勉強せずに、
 大人になってしまう人が多いですよね。
 そこでハタと自分に気がついたらついたで、
 無理やり関係性をとりつくろうとして、
 そこでまた軋轢を生んでしまう。
 ・・自分もそうなんですけどね。」

彼女はその言葉を聴くと、
また微笑みを浮かべて、こう続けた。

「人生、楽しまなきゃ。考えすぎは良くないわ。
 人間ってさ、一瞬先は何が起こるかわからないから。」

そう、彼女は私の奥底に眠っている本心を掘り当てたのだ。

「そうですね」
相変わらず、そっけない返事を返した私であったが、
彼女はその裏の心の揺れを嗅ぎ取ったようだった。

つづく
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2006年03月25日

サヨナラ、夏の日々。#1

※特にネタが切れているわけではないのだけど、
保存していた某所の昔の日記を久しぶりに見返して、
多少構成しなおしてみました。落ちは一緒ですが。・・
もう早いもので、一昨年の夏の話になります。


夏の暑い頃。
とある仕事のプロポーザル書類提出のあと、
私は会社をサボって、千葉県の中央にある、とある観音さんに向かっていた。
自分自身は、特に信仰とか、そういった類の動機からでもなく、
また新規の仕事獲得のお願いをしに行った訳でもなかった。
仕事の結果といえば、案の定予想通りの他社にもってかれたから、
今考えれば観音さんにお願いしてもよかったのかもしれない。

私は日本建築のなかでも、崖や急な斜面に建てられる
「懸崖造り」という建物に興味があり、
全国のそういった建物を観て廻るのが自分的には大好きなのだ。
有名どころでは京都の清水寺や東北の山寺。
大分や鳥取にも有名な建物がある。
実はそれ以外にも全国各地に無名の建物がたくさんある。
この千葉の観音さんは、どちらかといえば有名なほうで、
日本建築の教科書にも出てくる位なのだが、
何分東京の西に住んでいる私にとってはすこぶる不便な場所で、
仕事で千葉へ出る時でないとなかなか行こうという気力が湧かなかったのだ。

それでも千葉市内から一時間ほど。
当日も暑いなかの移動。
しかし、やっとのことでたどり着くと、
そこにはなんと、修理中でシートに覆われた本堂が。・・・
それまで我慢していた汗がどっと吹き出した。
一応、中はじっくり拝観できたので志半ばというところか。

拝観を終えると、本堂の脇にお茶屋さんが目に入った。
中では初老の婦人が一人で店を切り盛りしていた。

ふと目に入るイチゴミルクのかき氷の看板。

ゆっくりと流れる時間。いや、昔のある時点で時代が止まっているようだ。
やや新しい冷蔵庫がカウンターの奥に見える他には、
この店のなかで今が平成であることを証明できるものは何一つ無かった。
昔どこかで見たことのある旧型のテレビからは、
普段見慣れない、昔のドラマの再放送が流れていたし、
店の広さに対して不釣り合いな大きさの手回し式かき氷製造器は、
遠く自分の幼少の微かな記憶さえ刺激した。

ふらふらと私は店の中に入った。

極めつけはこの店の主たる彼女の風貌であった。
これまた時代を特定することができない服と髪型。
しかし微笑みを浮かべる彼女の仕草は、どこと無く今風であり、
それがますます暑さで朦朧とした頭のなかで混乱を引き起こす。

その頭を振りながら、私はそれが当たり前であるかのように、
イチゴミルクを注文した。
彼女は黙って冷凍庫から円柱の氷を取り出すと、かき氷製造マシンにセットした。
その仕草があまりにもコンクリートのテストピースを潰す試験に似ていたので、
急に笑いがこみ上げた。我ながら、壊れ具合は最高である。
そんな私を察知したのか、彼女は私に背を向けながら、
微笑みを浮かべたような気がした。

そしてゆっくりハンドルを廻し始めると、
なんとも柔らかく、繊細な氷の切片がガラスの器を満たし始める。
瞬く間に山盛りのかき氷が出来上がると、
彼女はそこに、赤いシロップとミルクをかけ、
静かに私の前に差し出した。

私は歓喜のあまり、「いただきます」とつぶやくと、一気に氷を口に含んだ。
ケミカルなイチゴの甘い味が脳天を貫き、しばし至福の時を迎える私。
その姿をじっと見つめていた彼女が、ついに口を開いた。

「あんた・・いい耳してるね。」

つづく
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2006年03月19日

「40 翼ふたたび」

またまた石田衣良の本を読んでいる。
「エンジェル」や「娼年」にみられるような、
全体の構成の巧みさもさることながら、
自分にとっては文体、特にディティール描写の参考の為に
密かに読んでいるバイブルだったりする。

また作品内容においても、彼の作品の主人公に共通する
「何か、超えられない煮え切らなさ」に
魅力を感じてしまう今日この頃。



今回は完全に衝動買いだ。
思えば、40という歳はまるで自分の中にはなくて、
永遠と30代が続くのだと感じていたけれど、
この本に登場する40歳代の人物達の救いがたい現実というのは、
刻々と自分の身にも音を立てて近づいてきている。
つまるところ、答えのない40代にはなりたくないと思いながら、
気がつけばそこにもう両足を突っ込んでいるようなものなのだ。
その独特な作者の世界観は、彼のオリジナルな世界の中に留まらず、
既に社会の枠組みの典型例にさえなりつつある。
40というターニングポイントを控え、自分は一体何をすればいいのか。
そんなことを考えさせてくれる、有難くも迷惑な読み物。
でも、とりあえず買いなのだ。
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2006年03月14日

卒園式

今日は娘たちの卒園式。
昔ながらのワックスがかかった木の床に、
些か黄ばんでくたびれた壁。子供の空間としては何故か高い天井。(判る人には判る?)
そして色紙の飾り付け。
子供の匂いと水槽のカメとワックスの匂い。
子供たちの騒ぎ声も心地よいBGMのようにこだまする。
そしてホンキートンクな疲れたピアノを先生が弾き始めれば、
遠い昔の時間に自分が引き戻されそうで、
急に切ない気持ちに満たされてしまう。

ふと我にかえり、花の香りと花粉の入り交じった外の空気を力いっぱい吸い込んだ。
汚れた自分を再確認する為に。
自然と流れそうになる涙を花粉のせいにする為に。


気付かぬうちに子供は成長する。
普段毎朝接しているつもりでも、友達との接し方が変化している。
多分に演出があると思うのだけど、
卒園証書をもらう際に、一人一人が
「大人になるということは」というお題で発表するのだが、
その各人の一言一言がかわいくもあり、
またハッとさせられることもある。

ちょうど自分のネガとポジの二つの側面を受け継いだ二人は、
明らかに別の角度から自分を映す二つの鏡でもある。
「大人になるということは、
もっと早く走れるようになる、ということ」

「大人になるということは、
小さなことで喧嘩をしなくなる、ということ」

自分も、そうありたい、と思った。
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